ダイジェスト
宗男とご近所の人々
奥茨城村、谷田部家の田んぼ。
田植えの準備が進んでいた。
バイクの音がして、宗男さんがやってきた。
「兄貴!?おいおいおい。どうしたんだよ。帰ってきたのかよ」実をみて驚きバイクから降りる。ちよ子と進が駆け寄り、まだ戻ってないんだから無理矢理思い出せようとしたらダメだ、と宗男を制した。
「わかりました、すいません」
宗男はヘルメットを脱いで実の前に立ち、「弟の宗男だ。全然にてながっぺ?」
「あらためて、よろしく」と握手し、実をハグした。
「よーし俺が来たから百人力だー」
「さっさと支度してこい」と茂じいちゃん。
角谷家の夫妻、助川家の夫妻がリヤカーでやってきた。
君子ときよが、実に気がついて驚きあわてて走り寄ろうとした。美代子が駆け寄り、二人に何か説明しているようだ。
にっこりと、初対面の人にするような会釈をする実。
辛いこと悲しいこと、みんな笑ってしまえばいい
田植えがはじまった。
全員で田んぼの中に苗を投げいれていく。
きよが、大きな声でいう。
「そうが。まだ思いださねえのか。いがっぺよ、そんでも~」
それじゃ実さん、私が初恋の相手だつうのも覚えてねえのか」
「冗談だ。アッハッハ」
「悪い冗談言うなよー」
「いいんだよ。笑ってしまえば。辛いこと悲しいこと、気遣わないでみんな笑ってしまえばいいんだよ」
君子も言う。
「私だってよ、みんな忘れちまいたいよ、嫁に来てからのこと」ワハハハとみんな笑う。
茨城の女は強い。
一同は苗を植え始める。
「兄貴こうやってよ、三本づつ植えるんだ。筋にそってな」宗男が実に説明した。
実の田植え、体が覚えていた
実が苗を植え始めた。全員が手を止めて注視する中、慣れた手つきで植えすすんでいく。
「お父ちゃんすげえ」
「体が覚えてんだっぺ。ほら!」と茂じいちゃんが苗を投げた。
突然、実は足をすべらせ倒れてドロまみれになった。
駆け寄ろうとしたみね子もひっくり帰り、顔が泥だらけになり、タヌキみたいだと笑われる。宗男も悪ノリしてわざと転び、他の男性も引き入れて転げ回る。
(お父さん。なんだか、いろんな事が大丈夫な気がしてきました。これからも、きっと大丈夫)
庭の千草も虫の音も♪ 女性陣は歌いながら苗を植え進む。
「いいもんだな女の人が唄ってんのは」
田植え終了
田植えが終わった。
宗男も他家の応援も帰ったらしく、谷田部家の家族だけで田んぼを見下ろしている。
「きれいだなー」
「きれいだね」
「ゆっくりでいいんだ、ゆっくりで」と茂じいちゃんが実の背中をなでた。
「谷田部家の皆様!今年も田植え、お疲れ様でございました」みね子が言った。
「お疲れ様でございました!」ちよ子と進もマネをした。
一同は、田んぼから引き上げていく。
感想
あれれ?
素敵なドラマに戻って安心していたのですが、今回はおかしいです。目を疑うようなことが多々あり、私はドラマの世界に入っていけませんでした。どうしたんだろう?
不自然なことばかり
まず、宗男さんの反応。
田植えに実さんが来ることは知らなかった様子。記憶喪失だというのは知っていたのでしょうか。知っていたにしても、3年近く会ってなかった兄弟にしては、あまりにも情の薄い再会ぶりです。
そして田植えの作法。
私は農家でもないし田植えしたこともありませんが、田のヘリからソロソロ少しだけ入って、真ん中に向かって植え進むのは明かにおかしいと思いました。せっかく植えた苗を踏みつけているではありませんか。
本当は、田んぼの真ん中に人が入り、一列に並び、定規にそって植えては後ろに下がるものですよね?
それから。田んぼの中でわざと転び泥だらけになってふざけるという演出はどうなの?
これから植える大事な田んぼで、あのような事をするんですか?
笑わせようとしてるんでしょうかね、私は笑えませんでした。
米農家の方が気分を害されるのではないかと心配です。
また「大丈夫け?」「うん大丈夫」という会話がかなり頻繁に出てくるのですが、何をそんなに案じているのかよく分かりません。田植えしたことない役者さんたちが、うまくできるかどうか心配しているのでしょうか、それとも田植えしたことない脚本家には、会話が思いつかなかったのでしょうか。
私は少し怒っていますが(笑)、まぁ、黒澤明の映画ではないしテレビドラマなんですから..大筋に影響しない描写にそこまでこだわっても仕方ないか….
『茨城の女は無神経』に見えるけど
さらに、ご近所の人達。
きよさんが
「いいんだよ、悲しいこと辛いこと、気を遣わないでみんな笑ってしまえばいいんだよ」と言いましたが、常識的にみて、これは他家の人が言うことではないと思います。
他人は、気をつかいすぎるくらい気を遣うのでちょうど良いのです。実際に辛い悲しい思いをしているのは当事者ですから、肩代わりできない他人としては、気を遣い思いやってあげることくらいしか、してあげられないのですね。
その他者からの思いやりを感じて、当事者の谷田部家の美代子さんが「いいんだよ、気を遣わないで笑ってしまって」と言うのであれば自然なのですが。
あるいは、きよさんにも辛い悲しいことが過去にあり、その経験から発言した。という描き方であればOKなんですけど。
また、君子さんが
「私も嫁に来てからのこと全部忘れてしまいたいよ~」というのも何だか..夫への不満と実さんの記憶障害を一緒くたにするのは乱暴ですね。軽口をたたいて場を和ませるのであれば、実さんの件とは関係ない話題にしたほうがいいのでは?
どうも『茨城の女は強い』ではなく『茨城の女は無神経』に見えてしまいました。
あまり実さんの記憶のことに言及せず、例年通りの田植えの会話をして正しい作法で田植えを進めてくれたほうが、私は思いやりを感じ取れたと思います。
….あっ!私がこう感じるのは京都人だからでしょうか?
良かった点:
美代子さんは、田植えの衣装を着るとすごく美しい。とても似合う。
ドラマを制作するのって大変ですね。視聴者は色々な良いドラマを見て、どんどん目が肥えていきますから。